今年一年で、不適切保育という言葉を何度耳にしたでしょう…
その言葉を聞くたびに胸が痛くなります。
保護者がどんな想いで大切な我が子を預けているか、
預かっているのは「かけがえのない命」と、「その子の将来」。
保育士はそのことを自覚し、保育をしなければなりません。
ただ、「今思えばあれは不適切保育だった」ということを昔私自身がしてしまっていました。
泣いている子どもに強く叱責したり、構ってほしいと思っている子を無視したり。
その原因は、職場環境にありました。
人手がなく、経験のない保育補助と常に保育を行うというストレス、
さらに頑張ってもだれからも認められないという虚しさ…
その当時一緒に働いていた保育補助の先生が、私の保育について「間違っている」とはっきり言ってくれたことで目が覚めました。
その当時のことを思い出すと保育士失格だったと今でも悔やんでいます。
保育園は、とても閉鎖的な場所が多く、園の中でどのような保育をしているか
知らない保護者も少なくありません。
我が子を預けている保育園が本当に安心できる場所なのか、その判断はとても難しいですよね。
まだはっきりと話ができない乳幼児は、先生に何をされたか親に伝えることもできません。
仕事と子育ての両立で、園選びには一番に利便性を考えてしまうというのもわかります。
でも、保育園や幼稚園でわが子を失った親にとって、この園を選んでどれほど後悔しているか
考えたことはありますか?
私は、先日石巻市まで行き、東日本大震災で当時幼稚園に通っていたお子さんを亡くされた方の
お話しを直接伺いました。
高台にあった幼稚園から園バスを海のほうへと走らせたために亡くなってしまった子どもたち。
その経緯を実際の現場で聞き、本来なら助かるはずだった命が奪われてしまったことに、
保育者としてどうすべきだったかを何度も自分に問いました。
「すぐ近くにあった保育園は、津波で建物が流されたにもかかわらず、全員高台へ避難できていたのに…」
その時つぶやくように話されたその言葉から、
「あの保育園にわが子を預けていればわが子は死なずにすんだ」という悲痛な思いが伝わってきました。
全国で起こる不適切保育に対し、今自治体も慌てて研修などを行っていますが、
不適切保育をなくすには、何が不適切かを教える研修よりも、
保護者と保育者が信頼し合える関係を作ることが最も大切だと思います。
信頼関係を築くためには、園はもっと開放的になること。
毎日保育参観ができるような、いつ来ても良いですよ、というスタンス。
保護者ともっと話す機会も必要。
園内の研修も保護者にも参加してもらい、子どもたちを共に育てようという気持ちでお互いに助け合う関係作りを目指すこと。
まだまだ待機児童の多い地域では難しいかもしれませんが、
保護者には園を選ぶ権利があります。
安心して預けられる保育園・幼稚園を探すために自分たちの目で見て、聞いて、確かめて
納得のいく園に預けてほしいと願います。
そして、保育士達も他の保育士が正しくないことをしていると思ったら、
ためらわずに勇気を出して、役所へ相談するなり、何か行動を起こしてほしいです。
子どもたちは自分自身で身を守ることができません。
なぜ保育士になったのか、当時の想いを振り返り、もう一度原点に戻って考えることで、
正しいことが何かを気付くことができると思います。
いつか「不適切保育」という言葉がこの世からなくなりますように…
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